父とリンゼイの「雨だれ」
2005 / 11 / 05 ( Sat ) 「ギターを始めることにした」
と伝えたとたん、母親の顔がこわばった。 「あの悪夢がふたたび・・・」 頭を抱えこんだ母に事情を問いただすと、初めて聞く父親の過去が明かされた。 両親が結婚した当初、父の趣味はクラシックギターだったらしい。私は驚いた。ギターを弾く父の記憶はない。だが当時はギター全盛期である。弾いていてもおかしくはない。 「で、うまかったの?なんでやめたの?」 トリガーはリンゼイの「雨だれ」だった・・・ ![]()
父親は非常に勤勉な人間である。ラジオのビジネス英会話を30年間、聞き逃したことがないほど勉強熱心だ。そのクソまじめな性格は、ギターの練習にも現れた。同じフレーズを何時間も練習し、つっかかるたび最初に戻り、それを毎日つづけるのであった。身近な人間はたまったものではない。
父がいつもの調子でリンゼイの「雨だれ」を取り始めた頃、とうとう母親はブチ切れた。 この曲をご存知の方は、ためしに想像してほしい。 3時間連続でリンゼイの「雨だれ」。 それだけでも相当きついが、父の場合は一小節ごとに「ビシッ」とか「バシッ」とかつまづくリンゼイの「雨だれ」3時間だ。 人間を拘束した状態で額に水滴を落とし続けると、じきに発狂するという。母も同じような精神状態になったのだろう。家をとびだし、あわや離婚の危機となった。 それから数年後、2人の子供は成長し、家に父のギターはない。危機は回避され、我が家に平和が訪れたかにみえた。 「だが、それも束の間だった・・・」 悪しき遺伝子を受け継いだ私を母は嘆いたが、そのうち徐々に態度が軟化した。父より娘の方がわずかに素質があり、かつ長時間ぶっとおしで練習するほどの根性がなかったからだろう。 リンゼイの「雨だれ」だけは、いまだ音取りを控えている。 スポンサーサイト
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--RE:「雨だれ」--
リンゼイの「雨だれ」がそんなに危険な曲だとは、 全く思いませんでした。別の曲をやっていたら、状況は違ったかもしれませんね。
by: prelude * 2005/11/07 20:38 * URL [ 編集] | page top↑
--prelude さん いらっしゃいませ。--
父との組合せは危険でしたが、本来とても素敵な曲だと思います。うまい人が弾くと、ほんとうに「雨だれ」に聴こえますよね。 |
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